you me

Toshifumi Tafuku


まだ広島に住んでいたときピザハットで配達のバイトをしていたことがある。約一年くらいは働いたと思う。良い人ばかりでとても居心地が良かったのを覚えている。

ある日とあるヤーさんのところに届けに行った。「ピンポーン」とインターホンをならすと中からドスの利いた声で「入れ」と聞こえてきた。「え・・・」と思いながらドアをあけ中に入ると、
ブリーフ一丁で身の丈180センチ以上のガタイの良い若い男が立っていた。その体は刺青だらけで体中に無数の切り傷や刺し傷のあとがあった。特にお腹のあたりにかなり深そうな刺し傷の跡が
いくつもあった。例えるなら映画「血と骨」に出て来る金俊平の体みたいな感じの豪傑である。僕は度肝をぬかれると同時にさっと血の気がひいた。しかもその男は「いつでも殺ったる」という
感じの普通の人とは全く違う、恐ろしいほど鋭い目をしていて僕を睨みつけていたので僕はビビりあげた。そのヤーさんは僕がピザを渡そうとすると鬼の形相で「オドレピザはよ渡さんかいコラ
ァ!ボケー!!」と叫び金を貰おうとすると「外に出ろ」というので「え」と返すと「外で待っとけ言うてるやろこのボケはよ出とかんかいワレェ!」と怒鳴り10分以上僕を外で放置したあげく
懇願してやっとお金を払ってもらい釣りを渡そうとすると「オドレ釣りくらい用意しとかんかいコラボケカスゥ!!」と脅した。そこは広島だったが彼は関西弁だった。とにかく、僕が一秒間に
32回くらい「スイマセン」を連発したのは言うまでもないだろう。お釣りを渡して逃げるようにその場を後にしたがその後三日間くらいブルーな気持ちになってしまった。余談だが、僕がバイト
をしているときピザハットのピサの中で一番うまいと思ったピザはとりたま親子というテリヤキチキンと卵のピザである。仲間内でも絶賛されていたのだがなぜかすぐにメニューから消えてしまっ
た。もう一度とりたま親子が食べてみたいとふと思った六月の午後。